七五三をはじめ、子の成長の節目は色々ある。近頃は「二分の一成人式」もよく聞く。はたちの半分の10歳を記念して、学校や地域で祝ったり、夢を発表し合ったりする。「やさしい人になって困っている人を助けたい」。そんな女の子の記事が、何年か前にあった▼その少女も10歳前後だったと伝えられる。夢もあったろうに、爆発物を体に巻いて爆死した。爆発はアフリカ、ナイジェリア北東部の市場で起き、大勢を巻き込んだ。別の市場でも若い女性2人が爆死した▼遠隔操作で爆発させた疑いがあるそうだ。イスラム過激派「ボコ・ハラム」が、少女らを「人間爆弾」にしているとの見方がある。西洋の教育を敵視する組織は去年、200人以上の女生徒らを誘拐した▼かつて先輩記者が書いた本に、一人の少女が出てくる。シエラレオネという国で、制服のまま学校から集団で拉致された。11歳で銃を持たされ兵士にさせられたという。大人の男の非道と少女の不憫(ふびん)に、胸がつぶれる心地になる▼残忍きわまる男たちも、もとは無理やり少年兵にされた者かもしれない。背景には貧困と無知、憎悪の連鎖。武器商人の暗躍もあろう。小さき者の未来が醜悪な歯に砕かれる図は、同じ地上の現実として耐えがたい▼フランスの悲劇は世界の悲劇になった。ならばアフリカに爆発音を残して消えた少女の死も、世界の悲劇なのだとは思えまいか。「やさしい人になって困っている人を助けたい」――そんな女の子だったかも知れぬ。